前回は、甲状腺とその働き、疾患について少しお話をしましたが、今回は、甲状腺機能の亢進や低下によって起こる代表的な疾患についてお話しましょう。
バセドウ病
甲状腺を刺激する抗体が甲状腺ホルモンを過剰に分泌させる病気です。30~40代に発症する人が多く、ほかの甲状腺疾患と比較すると男性患者の比率が高いのが特徴ですが、男女比では1:4と、やはり女性に多い病気です。
ホルモンの過剰分泌により、新陳代謝が必要以上に活発になり、疲労状態が続くのが特徴です。症状としては首の腫れや眼球の突出のほか、動悸や息切れ、発汗、集中力の低下などがみられます。エネルギーを過剰に消費するため、体重が減少する傾向があります。
これらの自覚症状は、同時に全て揃うというものではなく、一つ一つの症状も甲状腺に特有というものではありません。更年期障害や糖尿病、心臓病などと勘違いされる可能性もあるので注意が必要です。
橋本病
自己免疫の異常により甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気です。甲状腺組織が破壊されるため、甲状腺ホルモンが不足した状態が続きます。特に女性に多く、年齢的には40~50代に多くみられます。
エネルギーが足りず心身ともに元気が出ないのが特徴で、だるさや物忘れといった症状から、うつ病や認知症などと間違われることもあります。ただし、ほとんどの人は症状があまり出てこない「潜在型」です。甲状腺機能の低下によるむくみや冷え、代謝の悪化、月経異常といった症状が顕著に現れる人は少なく、多くの場合、首の腫れや血液検査などで発覚することが多いといわれています。
気になる症状のある方は、かかりつけ医に相談してみましょう。また、人間ドックや検診等でも検査を受けることができるので、機会があれば調べてみるのもいいですね。