川や湖、海などを総称して“公共用水域”といいます。
この”公共用水域”にはそれぞれ「水質汚濁に係る環境基準」により基準値が設定されているのは過去のコラムでもご紹介しました。
「水質汚濁に係る環境基準」のうち、微生物に関係する項目の「大腸菌群数」が令和4年に「大腸菌数」に見直されました。
そして、工場等から公共用水域へ流れる排水の基準「水質汚濁防止法施行規則」の「大腸菌群数」も、令和7年4月から「大腸菌数」に変更されます。
今回はこの「大腸菌数」についてお話します。
「大腸菌数」はその水域がふん便で汚染されているかどうかの指標と用いられています。
大腸菌と聞くと「下痢などを起こす菌」というイメージがあるかもしれませんが、病原性がある大腸菌は一部だけでほとんどは無害です。大腸菌は、水系感染症の原因となる赤痢菌やチフス菌と同じく動物の腸管に存在しふん便にも含まれますが、ほかの菌と比べて費用・技術面で簡単に数を把握することができます。
※それぞれの水域での基準値はこちらから確認できます。
「水質汚濁に係る環境基準」を設定した昭和46年から令和4年の見直しまで「大腸菌群数」が基準値でした。
大腸菌群とは、大腸菌と共通する生化学的な特徴をいくつかもつ菌のグループ(大腸菌以外の菌も含みます)です。
大腸菌群もふん便中にたくさん存在しますが、一方で土壌や水中などにも存在していて、ふん便汚染を正しくとらえられているのか疑問でした。
昭和46年当時は、大腸菌のみを簡単に検出する技術がありませんでしたが、年月が経ち技術が進歩し、現在では簡便に大腸菌のみを検出することが可能になり、基準が改正されました。
このように、適切な指標と基準値は時代によって見直され、公共用水域や排水の水質を把握し、適切に汚水を浄化処理することで豊かな水環境が保たれています。